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書籍案内(「グローバル化と民俗文化 民俗経済学研究2」)
紹 介
『グローバル化と民俗文化』
編者:日本民俗経済学会
平成17年10月1日刊
出版社:現代図書
定価:2667円+税
季刊「知足」編集長 関根茂世


 本書は、日本民俗経済学会の会員による共著である。
 民俗経済学とは、上武大学・菅野英機教授が創始した学問で、「日本と世界の各地域に生活する人々の暮らしを、それぞれの地域の文化や慣習と、経済や社会制度の相互依存関係において捉え、この立場から日本と世界各地の経済や社会制度ないしは人々の暮らしを分析する学問」と定義している。また、この学問は、地域的差異と変化発展の諸相に焦点を当て、分析し、「何を残し、何をどのように変えていくべきかに答えることが目的である」と標榜する。
 同学会は、平成7年に創立され、現在、会員は大学教授、会社経営者など約70名にのぼるが、創立以来、定期的に学会を開催し、その成果は「民俗経済学研究」として上梓されて、本書はその第2弾として刊行された。
 本書第1部「民俗経済学の理論と各地域の分析」第1章に、深澤賢治氏著「企業経営に見られる儒教精神」の1篇である。
 著者は、日本陽明学の系譜を継ぐ、おそらくは日本では唯一の学府・二松学舎大学で学び、28歳の若さで警備保障の株式会社シムックスを創業。東洋思想に心を潜ませつつ歩み来て、32年後の今日も総帥として2000名の社員を率いる、言わば文人経営者である。
 「(学問とは)始めは文字より入らねばならぬが、実行されるや否やを味わうのが第一だ。すれば、書物の有難味がわかる。」
 「何でも正味を会得しなければならぬ。実行するつもりで読まねばならぬ。自分に若しも出来ない事が言うてあったら、それは無用なことだ。」

                 (二松学舎創立者・三島中洲『老子講義』)
 佐藤一斎、山田方谷、三島中洲・澁澤榮一と継承された徹底した活学精神は、この人物を得て体現されたと言えまいか。学問で己を磨き、経営で実践する。学舎では石川梅次郎に学び、木内信胤に師事、安岡正篤に私淑して学び続け、その学びと行いは一体となった。おのずと同志は糾合されて、相互の切磋琢磨へと進み、平成19年春から、教育啓蒙機関「中斎塾フォーラム」を創立して、東京・湯島と北関東・太田を拠点に教化を垂れている。
 本篇は、いわば氏の学びの足跡のダイジェスト版といえよう。「学びの本義」からはじまり、儒教・孔子・論語・陽明学、澁澤論語・方谷の財政改革と説かれ、氏の他書のエッセンスがちりばめられ、知行合一のちいさな入門書となっている。
 グローバル化のあるべき姿を追究するとの本書のテーマに、氏の1篇は、社会が真によき思想・哲学・伝統を大切に思うなら、人生の中で高貴な役割を果たすすべてのものに、それにふさわしい畏敬の念をもってこれに接し、学び、実践すべきことを暗喩していると言えるだろう。